NEW

 

社会保険での「かかりつけ歯科医」制度導入のために
─── パソコンとデジタルカメラを利用して ───

 旭川歯科医師会学術大会 
平成12年11月12日 
道北口腔保健センター 
演者 山田 雅昭 
平成12年4月より、「かかりつけ歯科医」制度が導入され、初診料が186点より270点に引き上げられました。
しかし、その内容をみると、とても制限が厳しく、通常の診療での導入は各歯科医院でも大変難しかったと思います。
今回の医療費の改定(改悪)で2.0%の値上げで、その内1.6% が、「かかりつけ歯科医」目的の財源を用意されたと、後日聞きました。
その後、導入要件である文書の簡略化が、進められるようになった機会に医院ではもう一度、「かかりつけ歯科医」としての診療体制を整え直しました。
具体的には誰でも簡単に出来る、デジタルカメラで口腔内写真とスタディモデルを撮影し、患者への説明と写真データーの整理・保存・プリントの方法について、解説します。
必要なものはデジタルカメラ、パソコン、写真整理・プリントソフト、プリンターです。
安価な市販品のみを利用しているので、早くて簡単に誰でも利用できる方法です。
 
●「かかりつけ歯科医初診料」の算定要件
(下線が通知事項)

1.以下の施設基準に適合した届出
 @歯科医師の常時1名以上の配置
 A補綴物維持管理料の届出
 B患者の求めに応じて適切な情報提供、連絡調整が可能な体制
 C他の保健医療関係機関との連携体制
 D病名、病状、治療計画等に関する治療計画を算定し、別紙様式又はこれに準ずる様式の文書により、患者に情報提供が行なわれていること 
2.初診時に患者の同意を得る
3.病名、病状、治療内容及び治療期間に関する治療計画書を算定、患者に文書による提供を行う(文書の提供は再診2回目までに) 
4.患者に対し治療計画書の内容について、スタディモデル又は口腔内写真(この費用は所定点数に含まれる)を用いて説明 
5.治療計画に基づく治療が終了した月の翌月から2ヶ月間は、初診料(か初診を含む)は算定できない 
6.同一患者に対して複数の歯科医療機関での算定はできない
7.算定の旨を被保険証に記載する
8.治療計画の写しを診療録に添付しておく
9.スタディモデルを用いた詳細な検査結果を診療禄に記載する 

1.Dにおいての治療計画文書では最初に日本歯科医師会から原案が示されました。
図は山田歯科で改良したもので、原案より使用しやすくしてあります。 
でも問題点は、主な傷病名の治療計画の所です。記入するので、大変手がかかり、臨床上すぐに使用することが出来ません。 
その後、改定された治療計画書が、北海道歯科医師会から出されました。改定の図は、やはり山田歯科で改良したものですが、記入が簡単になりました。これを臨床で使用するのは、時間がかからなく良いのですが、その分患者さんに内容が十分にわからない欠点があります。 
今回は、そのため口腔内写真をデジタルカメラで簡単に早く、安く撮影でき、患者さんが解りやすく見られるように、プリントする方法について話します。 
 9.については、後でお話しします。
  
 


●私のデジタルカメラ遍歴

リコーDC−2 約40万画素
リコーDC−2E 約40万画素
ソニーDigital Mavica MVCD 約100万画素
ソニーCyber-ShotDSC-F55 210万画素
ソニーCyber-ShotDSC-S30 130万画素
ニコンCoolpix950 211万画素

すべて撮影距離は2〜5cmから∞ までで、マクロモードに切りかえなしで使用できます。
上記のように、6種類のデジタルカメラのほかにリコーのDC−4(130万画素)も使用していたのですが、現在は使っていません。(ある問題があったためです)
  
 

●記録メディア

1)PCカード
2)スマートメディア
3)CFカード
4)メモリースティック
5)フロッピー

通常はノート型のパソコンにPCカード用スロットがついています。また、スマートメディア、CFカード、メモリースティックはアダプターを使用してPCカードとして使用できます。最近のデスクトップには、USBスロットがついていて、ここに上記1)、2)、3)、4)が直接つなげる安い装置があります。また、画像のデーターは大きいので、最後にMO・CDなどに保存する必要があります。
 

●私の考えるマクロの条件

1.2〜5cmまで、近づくことができる
2.マクロ〜∞まできりかえなし
3.明るいレンズあるいは暗いレンズはフラッシュ発光
4.リングフラッシュよりは2点以上のフラッシュ

1について 口腔内写真は、できるだけ接写できるものが良い。
2について マクロと通常にきりかえるタイプのカメラは臨床上では使いづらい。たとえば、口腔内写真と顔ぼうなどを撮るときなど。
3について できるだけ通常光(天然光などならなお良い)で写すことによって良い色相がでます。オートホワイトバランスにします。また、暗いレンズはフラッシュがないと写りません。
4について もし、フラッシュを使用するときは2点〜3点ぐらいから発光するのが良いと思います。
 

●カメラによるマクロ撮影の違い

1)ワイド側のマクロ撮影
 通常のカメラはワイド側よりマクロの撮影になります。
2)ワイド側とズーム側の中間でのマクロ撮影
 中間のカメラはNIKON Coolpix950です。ミラーなどを使用するときは便利になります。
3)ズーム側のマクロ撮影
 ズーム側のカメラはフラッシュを使用しないと、必ず手ぶれ現象がおきます。前術のDC−4は、それが原因で使用していません。
 

●口腔内写真の写し方

1.正面
2.上顎
3.下顎
4.右側
5.左側
上記の前に、カルテ上の名前、生年月日を写し込んでで合計6枚撮ります。
スライド参照。
プリント例は、横2枚縦3枚で、A−5の大きさにプリントします。また、マクロの焦点が合う所によってカメラと口腔の距離が変わります。
   

   


 

●画像の保存

1)ハードディスク
2)MO
3)CD−ROM、RW
4)その他

100万画素のデジカメで撮影すると、JPGで圧縮して1枚あたり300KBぐらいのデーター量となります。当然、大容量の画像の保存メディアが必要となります。
MOは230MB、640MBあるいはそれ以上あり、使用感は良いです。また、CDは640MBです。
 

●使用ソフト   

デジクリップ2(画像管理ソフト プリント)同文書房3,800円
デジカメで同時プリント(画像調整付き画像プリントソフト)6,800円
GV(画像管理)フリーソフト 0円
GRP(多種類のプリント専用ソフト)シェア・ウェアー 2,000円

今回は、デジクリップ2の例を紹介します。このソフトは画像管理ソフトですが、他にアドインソフトが多数あり利用次第では、色々なものに応用がききます。
私どもでは、多数の患者の口腔内写真を管理するために、撮影した日を中心に時系列に並べて保存します。記録メディア(32MB用のものを使用)がいっぱいになったら、まとめて、その日付でファイルしていきます。そして、多数の口腔内写真(失敗作も)のうち、必要なものにそれぞれキーワードをつけて、4〜6枚ごとに、患者別にプリントしていきます。以前の画像データーは撮影日がわかればすぐに検索できるようになっています。もちろん、カルテには撮影日を記入しておきます。(撮影台帳があればなお良い)また、画像にはカルテの頭書きが写し込まれています。プリントした写真は、カメラメーカーによって色相がやや異なります。通常は、オートホワイトバランスを使用していますが、必要ならばソフト上で色相の調整をします。

 

●かかりつけ用紙 (改変) 

1)初期
2)改良
かかりつけ歯科医の用紙は、自医院で使用しやすいように一部改良を加えています。この用紙裏に必要があれば、上記の6枚の画像をプリントして、患者さんに手渡しします。
 

●スタディモデルの管理

1)写真と名前
2)内容の記入
最後にスタディモデルについてですが、平成12年4月より、模型からより詳しく口腔内の状態を記録するようになりました。これも、デジタルカメラではがき用紙プリントしてに撮影して、裏面(スタディモデル検査表)に図の形式で内容を記入して、カルテに貼り付けます。これで、検査内容は十分です。

 

*注:現在、当医院では患者さんの口腔内状態のデジタル写真を4年前より必要に応じデーターベースとして蓄積してあります。そして、平成12年4月からはほぼ全員の患者のデジタル写真を保存しています。それによって今後の診療に利用しています。また、技工指示の色・形態等の指示はデジカメ写真を利用して、インターネット・Eメール(画像添付)を経由して当医院の専属・指定技工所で綿密に打ち合わせて技工物を製作しています。
私達の歯科医院の治療は一歯科医の力だけではなく、それぞれの専門分野のなかのスタッフ達で診療・運営されています。(2001/8)